総長様は溺愛も暴走する
俺は助けられたとしても、絶対に女の部屋に入ることなどなかった。
前提として、手当をされたりすることもなかった。
それをあいつは、「困っている人を助けるのは当たり前」だなんて、平然と言いやがった。
偽善でも、嘘でもなく、ただただ真っ直ぐな目をして。
こいつは何を言っているんだ、と思った。
そんな目、俺は見たことがなかった。
こんな純真な人間、俺は知らなかった。
こんな人間は、俺の周りにはいなかったから。
ああ、こいつは、人間の中でも、特別なんだ。
そう気づくのに、時間はいらなかった。
こいつは、警戒する必要がない。