君が嘘に消えてしまう前に
私がこんな風になってしまったのは……作り笑いを見抜けるようになってしまったのは、ちょうど一年くらい前のこと。
とある事件がきっかけでいとも簡単にいじめのターゲットになった私は、はじめの頃 周りの顔色を伺うのに必死だった。
いじめの主犯格の女の子の機嫌を読み取ったり、周りの友達がいやな思いをしていないか気を張ったり。
そうやって人の顔色を見て、相手が何を考えているのかを考えているうちに。
いつのまにか、不自然な笑顔に人よりも鋭くなってしまった。
学年が変わっていじめがなくなっても、作り笑いが見抜けてしまうのは変わらなかった。
教室の中で日常的に繰り広げられる、何気ない会話。
そんな他愛ないやり取りの中にさえ作られた笑顔を見つけてしまう私は、一体どうしたら良いんだろう。
…私も、あの笑顔をそのまま素直に笑顔だと受け取れたら良かったのにな。
このまま毎日のように人の作り笑いを見続けたら、いつか本当に人間不信になってしまうんじゃないだろうか。
…ううん、多分もう私は立派な人間不信になっている気がする。
誰の笑顔も、誰の言葉も信じられない。
…信じたいような言葉に限って、向けられる笑顔は含みのある作り笑いなことばかりだから。