君が嘘に消えてしまう前に
2限、3限…と時間が経っても誰かが指揮者、伴奏者に立候補する気配はない。

そうしてあっという間に、今日の最後の授業である音楽の時間がやってくる。

音楽の授業は嫌いだ。
人前で歌うのも、楽器を演奏するのも、大っ嫌い。

それに、北校舎にある遠い音楽室まで1人で移動するのはひどく惨めな気分になる。

音楽のファイルと教科書三冊を持って、一人で教室を出る。
何人かで固まって音楽室に行くクラスメートたちの影に隠れるようにして、そそくさと北校舎三階の音楽室に向かった。


この学校で一番古いらしい北校舎の廊下は、場所によっては歩くだけでぎいぃ、と小さく音を立てる。

何年か前までは吹奏楽部がここの音楽室で活動していたらしいけど、新校舎に部室が移されてからはここが使われるのは音楽の授業の時だけだ。


今日の音楽の授業は、タイミングの悪いことに半分が合唱祭の練習だった。

まだパート分けができていないから、とりあえず女声と男声に分かれてソプラノのパートとテノールのパートを練習するみたいだ。

音楽教師の引くピアノの周りに続々とクラスメートが集まる中、私はその輪の一番外側に立った。

目立たないように、極力気配を消して小声で歌う。


…そうすれば、きっと疎まれずにいられるから。

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