君が嘘に消えてしまう前に

そうやってなんとか音楽の授業を耐え切って、行きと同じように一人で教室に戻った後。


「…ない」


三冊あるはずの教科書が、二冊しかない。
薄い教科書だし、たぶん音楽室の机の中に入れたまま存在を忘れてしまったのだろう。


掃除を終わらせたら、取りにいかなきゃ。


私の班の掃除の割り当ては教室だから、まだ雑談中の班員を横目に人がいないところから手早く机を後ろに下げていく。
気を利かせて手伝ってくれるクラスメートたちに曖昧な会釈をしながら、箒でゴミを集めていく。

そうして早々と掃除と掃除を終わらせて、私は北校舎の端にある音楽室に向かった。
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