君が嘘に消えてしまう前に

終わる気配のない拍手の中、瀬川くんのほうを眺めていると、不意に斜め前の席の女子が私のほうを振り返った。

肩につくくらいのサラサラの髪を揺らした小柄な彼女の名前は、確か藤井さんだ。

落ち着いた雰囲気で、よく友達と読んだ本の感想を言い合っているところを見かける。


去年クラスが一緒だったけど、良くも悪くも特にかかわりはなかったはず。


どうしたんだろう。


目があったまま固まる私に、藤井さんがきゅっと言い迷うように口を動かす。


「…その、頑張ってね、伴奏」


小声で拍手に紛れそうだったけど、確かにそう聞こえた。
ハッと目を見開いたときには、彼女はもう前を向き直った後だったけど。



「…ありがとう」



聞こえるかも分からない声量で、そうつぶやく。

教室に、少しでも私のことを見てくれる人がいたっていう事実が嬉しくって、泣いてしまいそうだった。


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