君が嘘に消えてしまう前に
「えー、というわけで責任者、指揮者、伴奏者の三人は今日の放課後新棟の音楽室で集まりがあるから忘れずに行くように」
瀬川くんに対する拍手がひとしきり終わった後、担任の先生のそんな言葉で朝のホームルームは締めくくられた。
今日一番のイベントが終わったことに、そっと胸をなでおろす。
座席に腰を下ろした瀬川くんは、小さく息をついた後にこちらを見た。
なんだろう。
わたし、何かした?
「…ごめん」
私にしか聞こえないくらいのささやき声に、戸惑う。
ごめんって、何が?
瀬川くんに謝られる節なんてないのに。
伴奏者を代わったのは結局は私の意思だし、むしろ下手な相手が指揮者じゃなくてありがたいまである。
瀬川くんの意図がわからなくてその目を見つめ返していると、彼は「何でもない、」と言って席を立った。