10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
2.不可解な男
城ヶ崎の手が胸に触れてきたので、流石にこの状況はおかしいと判断できた。

「やめてください。こんなのセクハラ⋯⋯カスハラです!」
 私が彼の手を引っ叩くと、彼は驚いた顔で目を丸くした。

「そんな事初めて言われたわ。俺、女に拒否されるの初めて」
「診察ではないんですね。最低です。私はここで失礼します」
 さっさと上着を着て去ろうとすると手首を掴まれた。

 私は掴まれていない方の左手でポケットに入れているスマホを操作する。
「警察ですか? 今、男性に部屋に連れ込まれ襲われ掛けています。住所は⋯⋯」

 私が110番通報しているのを、城ヶ崎さんは笑いを堪えるように見ていた。
 私は電話を切ると、彼を威嚇するように睨みつける。
「何がおかしいのですか? 貴方が何の職業をしている方か存じ上げませんが、今から貴方は全てを失うのですよ」
「何で?」
「私が今、警察を呼んだのを見てましたのよね?」
 私は彼がなぜ余裕をかましているのかが全く理解できない。


「城ヶ崎さん⋯⋯もしかして、警視総監の息子とかですか?」
「ふっ、何言って⋯⋯もう、余興は良いかな」
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