10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 私は猫が丸まって昼寝をしている動画を見ていたら、本当に癒されていた。
「涙、止まったね。それにしても、どこで城ヶ崎副社長と出会ったの?」

 彼の疑問はもっともだ。
 セレブな東京都港区出身の冬馬さんと、10年引きこもりの千葉県の港町出身の私の接点などどこにもない。

「私も記憶がなくて分からないの。実は、私、とある女性に3月末に刺されて2ヶ月間も意識が戻らなかったの⋯⋯それで、冬馬さん⋯⋯城ヶ崎さんに関する記憶というか最近の記憶は無くしちゃってて⋯⋯」
 
「えっ? 刺された? どこで? そんな事件あったっけ?」
「港区警察署の前⋯⋯」
「そんな事件があったら、ニュースになってると思うけど⋯⋯」
 私が動画を見ていたスマホを江夏君に渡すと、彼がニュースサイトを検索し始めた。

「病院で検査している医者と看護師さんが、私が冬馬さんのストーカーに刺された話をヒソヒソしていたのを確かに聞いたんだけど⋯⋯」

 私は何だか怖くなってきてしまった。

 記憶を失ったり、脳が新ししい記憶をスポンジのように吸い込んだり、今の私の頭は正常ではない。
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