10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 私の震えに気がついた江夏君がそっと私の手を握ってくれる。

「城ヶ崎副社長のストーカーか⋯⋯遊び相手が本気になっちゃったのかな。多分『ブルーミング』のブランドイメージを損なうから、箝口令が敷かれたんだと思う」
「箝口令⋯⋯そんな事出来るんだね。目覚めた時に城ヶ崎さんが私の恋人だって言ったの。私も半信半疑だったんだけど、彼の家に行ったら私のサイズの服がクローゼットに沢山掛かっていて」

「城ヶ崎副社長なら電話一本でそれくらい揃えられるよ。桜田さんが記憶喪失なのを良いことに恋人になりすましたって事はない?」

「私の恋人になりすます? 私よりずっと綺麗な女の人が選び放題なのに?」

 下着を持って来てくれた秘書の方でさえ、モデルのように美しい人だった。
 美しい女性に囲まれて仕事をしてそうな彼が私のような子に、そんな手の込んだ事をするとは思えない。

「俺は世界中の女性が選び放題の状態でも、桜田さんを選ぶけど⋯⋯桜田さんは俺の初恋で、10年間ずっと忘れられなかった」

 江夏君が真っ直ぐに私の目を見つめて、告白めいた事を言ってくる。
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