10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
「2万円? いつから江夏君ってそんなお金持ちになったの? 無理してない?」
「無理してないよ」
「そっか、ご両親に海外旅行をプレゼントできるくらいだもんね。偉いな。凄く頑張ったんだね」
 私はまた江夏君の頭を撫でていた。
 なんとなくだが彼は私に頭を撫でて欲しいタイミングで目を閉じて、私に撫でられるように頭を下げて来ている気がする。
 
「その提案って私しか得をしない気がするけど、それで良いの?」
 日給2万円も貰えて、冬馬さんの生活圏から離れられるなんて私にとっては願ったり叶ったりだ。
 江夏君が私との恋に敗れた後、私に対して気まづいと感じた気持ちが今なら分かる。私はもう冬馬さんと会いたくない。

 簡易のソファーベッドを開くことなく並んで色々とお喋りしてたら、結局朝になってしまった。
 
 カーテンから差し込む光が朝を告げているのに、私は今かなり眠い。
「江夏君、眠くない? 流石に私はちょっと眠いかも⋯⋯」
 私の言葉に彼が私を横抱きにしてベッドに横たわらせていた。

「ここで、眠ってて良いよ。俺は今から検査行ってくるから。軽い外傷だけだから、検査なんていらないと思うんだけどな」
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