10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
「俺も実は桜田さんのお陰で新生活が楽しみなんだ。あとで一緒にネットで家探ししよ。内覧する程の時間がないから、間取りと立地だけで決めちゃおうかと思ってるんだよね。こういう間取りが良いとか希望はある? アイランドキッチンが良いとか⋯⋯」
 雇われ側の私の希望まで聞いてくれる彼は本当に優しい人なんだろう。
 アイランドキッチンで、パソコンと睨めっこしながらお仕事をする冬馬さんの姿をチラチラ覗き見しつつ料理をしていた記憶が蘇り、胸がキュッと苦しくなった。

「脱衣所さえあれば良いかな」
「脱衣所がない間取りの家なんてあるの?」
「うちの実家が脱衣所がなかったよ!」
 私の言葉に江夏君が驚愕している。
 私と母の女2人の暮らしだから、そのような間取りで生活が成立したのだろう。

「北海道行ったら、何か食べたいものとかある?」
「札幌ラーメンとか?」
「それ、東京でも食べれるやつ。というか、今家にインスタントで良いならあるから俺作るけど!」

 江夏君がとても楽しそうに笑っていてホッとした。
 それにしても、家事が苦手と言っていたのに料理はできるらしい。
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