10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 なんとか、彼から逃れ私は涙目になりながら彼の目を見つめ懇願した。

「冬馬さん⋯⋯ちゃんと話しましょう」
 私の言葉に私に覆い被さっていた冬馬さんが、起き上がる。
 私も昨日はショックのあまり一方的に彼を拒絶して酷かったと思う。

 顔合わせという重要な席もすっぽかしてしまった上に、病院まで明らかに急いで来てくれた彼を追い出した。

「結局、丁寧に我慢しながら接してても未来は手に入らなかった。だから、このまま強引に俺のものにすることにする」

 冬馬さんは私にまた顔を近付けてくる。
 私は思いっきり顔を逸らした。

「私はキスじゃなくて話し合いがしたいです。昨日は私も興奮してしまって失礼な態度をとって申し訳ありませんでした」

 私はなんとか腹筋を使って体を起こし、頭を下げた。
 自分の姿を改めて見ると、ほぼ半裸状態だ。
 
 とにかく手首の拘束を外して欲しくて、彼の前に無言で両手を差し出す。
 彼は観念したように私を縛っていたネクタイを外した。

「ここではなくて、リビングに行きませんか?」
「いいけど⋯⋯」
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