10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
19.私を騙していませんか?

 黒い革張りのソファーに腰掛けている冬馬さんの隣に座る気になれなくて、私はテーブルを挟んだフワフワの白いラグの上に正座をした。
 テーブルの上を見ると、私が昨日持っていたシルバーのクラッチバッグを見つける。

「冬馬さん、バッグを見つけてくれたんですか? クレジットカードとか現金をお預かりした分が入っていたのですが大丈夫でしたか?」

「バッグは住人が拾ってコンシェルジュが預かってた。それにしても、お預かりしてたって本当に酷いな。俺が渡した現金もカードも全く使わなかっただろう。本当に俺と結婚する気なんてあったの?」 

 私が彼のお金を使わなかった事を彼がそんな風に解釈されているとは夢にも思わなかった。

 そっと、クラッチバッグから自分のスマホを出すと、冬馬さんからの着信がいっぱい入っていた。顔合わせの場に来ない私を沢山心配したのだろう。


「私は、冬馬さんと結婚したいと本気で思ってましたよ。私にとって貴方は初恋だったと思います」

 自分で言っていて泣きそうになった。

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