10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
「江夏君はそんな方ではないですよ。私は彼からそのような下品なことをされた事はありません。冬馬さんの常識で考えないでください」
 昨晩だって、一晩同じ部屋にいたが楽しくお喋りしてきただけだ。
 先程まで私をベッドに押さえつけていた男の常識で語って欲しくはない。

「商社マンなんて俺の知る限りみんな遊んでるよ。未来の中のアイツはサッカー部のエースで優等生だった中学時代の彼で止まってるじゃない? もう、10年も経っているんだから環境に影響されて人は変わるよ」

 冬馬さんの言葉が妙に引っかかった。
 千葉の港町にいた中学時代の江夏君の事を、なぜ年齢も住んでいる場所も違う彼が知っているのだろう。

「私は昨晩の江夏君も見てますが、とても紳士的でしたよ。私のせいで怪我をさせてしまったので見知らぬ土地に行く彼をサポートするのも私の義務だと思うんです」

「紳士的? 紳士的な男は一時でも万年発情期みたいな女とは付き合わないよ。江夏爽太なんて典型的なロールキャベツ男子だろ」

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