10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 私はとにかく彼の行動が理解できなくて、捲し立てるように疑問をぶつけた。
 冬馬さんが私の体を反転させて、真正面から密着するように抱きしめてくる。
 安心をもたらしてくれたはずの彼の高めの体温も今は恐怖の対象でしかない。
「未来の事を本当に好きになっちゃったんだ。もう、2度と出会えないような特別な子で、心から愛おしくて。一生一緒にいたくて、事を急ぎすぎたとは自分でも分かっている」

 私は彼の部屋に初めて来た日の事を思い出していた。
 結局未遂に終わったがまるで私たちに体の関係があったかのように彼は振る舞っていた。そのせいで私は彼に抱かれかけた。
(初めから嘘ばかりで、やっている事が酷すぎる⋯⋯)

 自分を客観的に見ても、私が彼の言う『2度と出会えないような特別な子』には到底思えない。私はお金持ちの大掛かりの女遊びに使われただけな気がしてきた。

「もう、分かりましたから、一回座ってゆっくり話しましょう。私は怒ってなんていませんから⋯⋯」
 私は湧き起こるような怒りに蓋をし、できるだけ柔らかな声色で彼に語りかけた。
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