10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 今、思い返すと彼は私をレイプしようとしたのだ。
 そんな犯罪行為を悪びれもせずしてしまう彼が怖くて仕方ない。
 そして大掛かりな遊びが上手くいかなかった事が嫌なのか妙に彼は私に執着している。
 変に刺激して、また押し倒されでもしたら私は到底彼に力では叶わない。

(逃げたい⋯⋯冬馬さんから逃げたい⋯⋯もう、好きじゃない⋯⋯)
 立ち上がって玄関に走って向かっても引き戻されるなら、隙を見て逃げるしかないだろう。

 私を優しい声で慰めるような彼の語りに適当に頷きながら、私はいかに彼から逃げるかに思いを巡らせた。

 まずは、「手首が痛い」と言って彼に冷凍庫まで保冷剤を取りにいかせる。
 
(その隙にキッコーロープを使って窓から逃げるか⋯⋯)
 浮かんだアイディアがあまりに非現実的で私は自分が今、冷静ではない事を悟った。
 ここは52階で風が強く、キッコーロープも地面までの長さが足りない。それ以前にロープを握り締め続けなければいけない私の握力も足りな過ぎる。

「未来? ぼーっとしてるみたいだけど、大丈夫? 顔色も悪いし具合が悪いんじゃ」
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