10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 フラフラする私を抱き寄せながら江夏君が言う。私は気がつけば彼の肩に頭を乗せていた。身体中が熱を持っていていうことを聞いてくれそうにない。

「熱い⋯⋯」
「熱が篭ってる。到着したら起こすから、もう寝て」
 私のクラクラする頭を江夏君はそっと自分の太ももの上に持っていく。
膝枕と言うやつだろうか、そんなに柔らかくないのに気持ちいよい。

「好きだよ。本当にずっと君のことだけが好きだった⋯⋯」
 熱がだいぶ上がっているのかもしれない。私は地元に向かう電車の中で、江夏君が私に囁く言葉を聞きながら意識を手放した。

♢♢♢


 うすっらと意識が覚醒していく。
唇に柔らかく温かいものが触れるのを感じた。
目をそっと開けると江夏君の顔がすぐ側にある。

「いやっ」
私は思わず江夏君の体を押し返していた。
江夏君がしまったと言った顔をしながら、私を見つめ返してくる。


「今、私にキスしてた? ここはどこ?」
 見渡したそこは知らない部屋だった。ベッドに寝かされて江夏君と2人きりの状況。

「俺の部屋。ごめん、俺、十年間ずっと桜田さんが好きだった。目の前にいると思うと我慢できなかった」
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