10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
私は江夏爽太の家で彼にキスをされていたらしい。意識のない人間にどうして勝手にそういうことができるのだろう。好きだから我慢できなかったなんて言い訳だ。不快感を感じて自分の唇を手で擦る。私の仕草を見て江夏君が傷ついた顔をするが、好きでもない男にキスされた私は最悪の気分だ。彼はモテる男だが、私にモテたことは一度もない。
「もしかして、病院で私が寝ていた時もキスした?」
病院でも目を開けた瞬間、江夏君の顔が近くにあった。
「⋯⋯本当にごめん」
「最低!」
私は江夏君の家を飛び出すように出た。道に出ると地元の見慣れた光景だ。でも、いつもと違う違和感を感じた。すれ違う人間が皆、私に和かに頭を下げてくる。私は母とこの土地で村八分のような状態だったはずだ。
自分の家の前には見知らぬ人たちが立っていた。
私を見つけるなり、三人の女性が近づいてくる。
「桜田未来さんですね。私、城ヶ崎冬馬様の依頼により来ました医師の森永梨花です」
白衣を着た女医さんを皮切りに、お手伝いさんとパンツスーツ姿のSPが自己紹介を始める。私が驚く間もなく、実家に沢山の荷物が運び込まれた。
「あの、これは一体」