10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 無事、被害届が受理され港区警察を出る。
 思ったよりも時間が掛かって、外はもう夕暮れ時になっていた。

「あっ、あの今日はありがとうございます。照明は大丈夫ですか? 世界に1つしかないお高いものなんですよね? 私にも破損の責任がある気がするので、少しでも弁償できれば⋯⋯」
 私が城ヶ崎さんに頭を下げながらお礼を言うと、なぜか爆笑された。

「あんたバカだなー。何、御礼なんて言っちゃってるの? 照明がオーダーメイドだって本当に信じてるんだ。普通の日本の家電メーカーのものに決まってるじゃん」
 私をバカにしたように笑う彼は何がしたいんだろう。

「私は、馬鹿ですよ。中卒で定職にもついていませんし。城ヶ崎さんは偉い方なのかもしれないけど、人を小馬鹿にして楽しむ最低の方ですね」
 感情が昂ぶり涙が迫り上がって来るのが分かる。外の世界には意地悪な人ばかりだ。私は涙を見られないように彼に背を向けた。

 その時、髪がボサボサでメイクはボロボロだが、元は綺麗そうなモデル体型の女性が目の前に現れた。
「冬馬、やっと見つけた⋯⋯東京中を探したんだよ。どうして、連絡を無視するの?」
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