10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
『未来さんとは、いつ会えるのかしら?』
 母のメッセージに気持ちが落ち込む。俺も未来に会いたいのに、彼女が俺に会いたいと思っていない。紹介すると約束した以上、今の状況を説明しないといけないと俺は母に電話した。
「もしもし、母さん。実は俺、未来に振られたんだ⋯⋯」
 女に振られる日が来るなんて思ってなかった。未来は本当に恐ろしく俺を惨めにさせる。

「ふふっ? 冬馬が振られたの? 貴方が振られるなんてあるのね」
「そんなに笑うなよ⋯⋯」 
 母は電話先でいつになく楽しそうに笑っていた。

「冬馬、貴方は挫折を知らない子だった。桜田未来さんは初めての挫折を与えてくれたのね。そんな子は二度と現れないわよ」
 静かに囁く母の言葉は俺の心の奥に届いた。未来は俺にとって唯一無二の女だ。
「俺もわかってる。今の俺でダメなら変わった俺で再チャレンジするだけだ」
 俺は決意を新たにし電話を切った。
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