10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 私は地元に到着してから、周囲が妙に好意的な態度になっている事を不審に思っていた。人々の手のひら返しに、人間不信になりそうだ。

「冬馬さん、私のこと調べたのかな? 私、あまり昔の話を細かく彼にしてないのに何もかも知られている感じがするんだよね」
 私の言葉に江夏君が静かに頷く。
「城ヶ崎さんは根っからのビジネスマンだからね。ビジネスは情報戦! 桜田さんの事も徹底的に調べたんじゃないかな」

 私の事を調べた理由が、私を弄びたいからではなく私を好きだからだったらどれだけ良いかと願った。

「仕事ができる人って女好きが多いのかな。英雄色を好むというか⋯⋯」
 冬馬さんの女性遍歴を思い出すと気分が悪くなる。消えたはずの彼への気持ちがまだ残っているのかもしれない。

「健康食品の通販会社から始めて一代で会社を大きくした小山内進も、女好きで有名だからね。相関関係はあるのかも」
 江夏君の言葉に私はため息が漏れた。女好きな男と関わると苦労をしそうだ。

ピンポーン!

 インターホンの音が鳴ると、江夏君が「俺が出るよ」と足早に玄関に行く。
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