10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
25.私、売られたの?
「あの! 小山内社長、何か御用でしょうか?」
 江夏君が困惑したように私と小山内社長の間に入る。

「娘に会いに来たんだ。未来、君は私と美亜と愛し合ってできた子に違いない。ああ、よく見るとポテっとした口元が私に似ているではないか」

 父親がどういうものかは知らないが、彼が私を見る目は父親の目ではない。品物を見るような見定める目だ。私は気持ち悪くて眩暈がした。

「父親はいないと思って育ってます。愛し合って私ができた? 母が貴方を愛していたとは思えません」
 高そうなスーツに身を包んだ小山内進を見ると気分が悪くなる。困窮していたのに母は彼を頼らなかった。つまり、彼は母にとって関わりたくない人物だということだ。
「ふっ、本当に気が強いな。そんな所も美亜にそっくりだ」
 小山内社長が手をサッと挙げた。
 その合図と共に、黒服の男たちが私を連行しようとする。

「ちょっと離して!」
 身を捩るけれども拘束が強すぎて逃れられそうにない。

「まあ、落ち着いて親子の語らいでもしよう」
「私は貴方の娘じゃありません!」
「結果は自ずとわかる」
 小山内社長は私の毛髪を一本抜くと、秘書に手渡した。
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