10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 冬馬さんが派遣してくれたSPは気絶させられ、お手伝いさんと女医さんは拘束されている。

「桜田さん!」
 黒服の拘束を振り切り、江夏君が私に近づこうとするも気絶させられ叶わなかった。

 黒いリムジンに押し込まれて、無理矢理にソファーに座らせられる。趣味の悪い豹柄のソファーに寒気がした。

「未来、城ヶ崎冬馬の婚約者になったそうじゃないか。私と同じで金の匂いを嗅ぎ分けるのが上手い」
 シャンパングラスを傾けながら、小山内社長に囁かれた言葉にゾッとする。
彼は私が城ヶ崎冬馬の婚約者になったと聞き、すり寄ってきたのだ。

「私は城ヶ崎冬馬さんとは何の関係もありません」

「ハハッ! 何をいうか! お前の為にリゾートホテルまで故郷につくろうとしている男はお前に骨抜きなんじゃないか? お前は母親と同じ魔性の女だな。嫌がりながらも、結局隠れて私の子供を産んだ美亜と同じだ」

 小山内社長の言葉に私は母親が決して父を愛していると、決して言わなかったことを思い出していた。

 私は自分が不倫の子だという事実を知った時に、不倫相手の奥さんに詫びに行くべきだと母に迫ったことがあった。
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