10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 母は彼女は自分と不倫相手の関係を知らないと言った。
 私はバレないなら人のものを盗んで良いというのは、泥棒の考えだと母を責めた。
『泥棒してまで奪いたいくらい好きだった人なの?』
 私の問い掛けに母は決して答えなかった。ただ、俯いて涙する母に私はそれ以上何も聞けなかった。

 母は千葉に来る前は東京の小山内食品で勤めていたと聞いている。東京で働いていた母が職の少ない田舎に来て私を産んだ。おそらく小山内進から身を隠す為だ。
 私は小山内がパワハラとセクハラの延長で母に関係を迫ったと悟った。

♢♢♢

「私は食品会社の社長で終わらず、城ヶ崎グループのように手広く事業をやりたいと思っているんだ。未来には娘としてその助けをして欲しい」

 城ヶ崎グループのように手広く事業をやりたいと野望を淡々と話す小山内社長に私は嫌悪感を抱いた。

 彼はここまで私の存在を無視して来たのに、利用できると思って擦り寄って来ている。
 ふと窓の外を見ると、車が立派なホテルの前に到着していた。
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