10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 私の強い言葉に小山内社長の顔が強張る。

「私たちは親子なのだから、おいおいじっくり話そう。実はドバイから客人を招いているから相手をしていて欲しいんだ。私は用事があって少し外さなくちゃいけなくてね」

「相手をするにも、私はアラビア語ができません。せめて辞書でも貸して頂けませんか?」
「適当に座って笑ってれば良いだけなのに、生真面目なところが母親そっくりだ。後で持って来させる」
 小山内進は含み笑いを浮かべながら去って言った。

 スマホを見ると冬馬さんから着信がたくさん入っているのに気づき、慌てて折り返しの電話を掛けた。

「未来、今、どこにいる?」
「私のお父さんと名乗る方に、城ヶ崎グループのホテルに連れて来られ⋯⋯」
 私が言い切らない内に電話は切られてしまった。
(冬馬さん?)

 扉をノックする音と共にホテルマンが「お客様5分後には来られるようです」と伝えて来てアラビア語の辞書を持ってきた。私は自分の脳がスーパーコンピューター化している事に感謝した。

 私は辞書をめくり、一気にアラビア語をマスターする。
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