10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
「城ヶ崎副社長、私の娘をお迎えにヘリでいらしたのですか? 是非、席を設けますのでお話を聞いて頂けませんか?」
 悪びれない小山内進の声に寒気がして、私は冬馬さんにしがみついた。

「大切な人が今、体を震わせてるので、ご挨拶は後ほどさせて頂きたます」
 冬馬さんは私をそっと抱き上げるとヘリに乗せた。

 ヘリに乗り込むと冬馬さんが私の耳にヘッドホンのようなものを付けようとしてくる。私は彼の両手首を掴んだ。

「私、売り飛ばされそうになりました。売り飛ばされるなら、冬馬さんに売り飛ばされたいです!」
「それなら、俺の一生で未来の一生を買わせて。本当に未来のことしか考えられないくらい君が好きなんだ」

 私は周囲に評判が立つくらいの遊び人を見るのは冬馬さんが初めてだ。私を愛おしそうに見つめて来る男は、ただの遊び人で私を落とすこともゲームの一つなのかもしれない。
(それでも、もういいや)

「私、冬馬さんになら騙されてもいいです! それくらい一緒にいた時が幸せだったんです」
 自分の声が涙声になっているのが分かった。冬馬さんが私の溢れ落ちる涙に遠慮がちに口付けをして来る。 
< 163 / 185 >

この作品をシェア

pagetop