10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
「未来に信じてもらえる俺になるよ。俺も未来といる時が今までで一番幸せだった。これからも、幸せな時間を君と一緒に紡いでいきたい」

 冬馬さんの顔が近づいてきて、私は彼の優しい口付けを目を瞑り受け入れた。唇が離れて冬馬さんと目が合う。私と彼はこれからどうなるのだろう。私の父親があの男で、力で私の母を捩じ伏せ孕ませたと思うと苦しくなってくる。
「冬馬さん、小山内進が私の父親なんですか? あんな人が父親なんて⋯⋯」
 私は自分のことなのに、冬馬さんに質問していた。彼は何でも知っている。江夏君曰く私のことは調べ尽くしている。

「小山内進は未来の父親じゃない。未来が可愛いから近づいてきた変なおじさんだ。これからは、知らないおじさんさんに着いて行ってはダメだよ」
 冬馬さんは微笑みながら私のおでこに軽く口付けをしてきた。彼は嘘ばかりつくが、今の嘘は私の為の嘘だ。嘘なんて嫌いなのに、その嘘は私の心を温かく満たしていった。

「冬馬さん、好きです」
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