10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 すると、冬馬さんは私の唇に軽くキスしてくる。お医者様もいる前なのに恥ずかしくて私は顔を両手で隠した。

「これで、思い出さない? 俺のこと⋯⋯」
「凄くドキドキするから冬馬さんに恋をしてた気はするんですが、思い出せなくて⋯⋯悲しい思いをさせてごめんなさい」

 私は恋人に忘れられた彼が可哀想で、自分が申し訳なさ過ぎて涙がポロポロと溢れた。
「すみません、少し2人っきりにさせてくれますか? 早めに退院して、検査は通院という形でお願いできると助かります」
「分かりました。では、今日明日で一通り精密検査をしたら、退院という形をとれるようにします」
 お医者様と看護師さんが病室を出ていくと、病室には私と冬馬さんの2人きりになった。
 冬馬さんが椅子から降りて、私の腰を掛けているベッドに移動してくると、私を安心させるようにそっと抱きしめてくれた。
 私は自分を気遣ってくれる人がいた事が嬉しくて、彼の胸に身を預ける。

「未来、早く俺たちの家に帰ろう」
 私を冬馬さんの腕の中は温かくて心地よかった。私を労ってくれる声も優しい。
「早く冬馬さんの事を思い出したいです! 本当にごめんなさい」
< 17 / 185 >

この作品をシェア

pagetop