10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 私は冬馬さんのことを本当によく知らない。それでも、彼と一緒にいると幸せを感じる。遊ばれてても良いなどと私らしくなく吹っ切った事で気が楽になった。

「そう言ってくれると嬉しい。俺のことあまり聞いてくれないから、興味を持って貰ってないじゃないかと思ってた」
 
私は彼の鎖骨のあたりをマッサージしていると、突然手首を掴まれた。

「こんなこと絶対に他ではしないで」
「私が母以外で、マッサージするのは冬馬さんが初めてです」
「この格好でしてたのか?」

 バスローブなんて、私はここに来て初めて着た。それまで、バスローブは洋画でしか見た事がない。冬馬さんが用意してくれた寝巻きはスケスケ過ぎて着れないから、中が見えないバスローブしか選択肢がなかっただけだ。

「大体ジャージでしたけど⋯⋯」
「未来のジャージ⋯⋯それは、それで」
 私は冬馬さんが私のジャージ姿を妄想して身悶えているのが分かってしまった。冬馬さんが私の事が好きなように見えるのは私の願望のせいかもしれない。それでも、私の一挙手一投足に反応する彼を見ていると心が満たされるのを感じた。
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