10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
「本当に成長したな。冬馬。人を信用できるようになったのは、未来さんのお陰かな。実は『ブルーミング』の社長職をお前に譲り、ホテル事業の方に専念したいと思っているんだ。今のお前になら安心して『ブルーミング』を任せられる」

 俺は思わず首を傾けた。未来の話はなぜか、俺の社長就任の話に変わっていた。城ヶ崎グループはアパレル会社『ブルーミング』を中心として、ホテル事業やホテル、レジャー施設、クルーズ事業など手広くやっている。父が一番拘っていたのが核であるアパレル事業だったので、それをこんなに早く譲ってくるとは驚きだ。

 父は机の引き出しから紙を出して来た。

「えっ? 婚姻届?」
「母さんから、一度未来さんに振られたと聞いた。また、振られる前に早いところ入籍してしまった方が良い。何を足踏みしている! お前らしくもない」

 父は婚姻届の証人欄に署名をすると、微笑みながらそれを渡して来る。

「あ、ありがとう⋯⋯ございます」
 俺は婚姻届を思わず賞状のように両手で受け取ってしまった。

「ふふっ、社長就任より未来さんと結婚できる方が嬉しいのか? そんな好きな相手ができる人生なんて羨ましいぞ」
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