10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
28.私、結婚します!
「お帰りなさい。冬馬さん」
 扉を開くなり、冬馬さんが嬉しそうに私に抱きつこうとしてやめたのが分かった。私は彼の手を引き、自分から抱きつく。するとゆっくりと彼が抱きしめ返して来た。

 冬馬さんはあえて私へのスキンシップを減らしている。それ故に触れたい時は私から触っていくしかない。

「実は今日良いことがあった」
頭の上から彼の弾むような声がした。

「ふふっ、見てたら分かります。冬馬さん、結構顔に思っていることが出やすいですね」

 私をゆっくりと横抱きにし、冬馬さんはソファーまで連れて行った。自分で歩けるのでお姫様抱っこの移動は必要ないが、彼が高ぶる気持ちのままにした事なので特に指摘はしない。彼から触れてくるのが貴重になっている今では嬉しいくらいだ。

「今度、社長に就任することになったんだ」
「おめでとうございます。ますます忙しくなりそうですね。私にできる事はありますか?」
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