10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 冬馬さんは多分とても忙しい人だ。私が眠りについた後も、書斎で仕事をしていたりする。私との時間を大切にしようと帰宅を早くしてくれているのは分かっていた。彼はきっと私を弄んでいる訳ではなくて、本当に私を愛してくれているのが伝わってくる。

 冬馬さんがカバンから紙を取り出した。テーブルの上にのせた紙は婚姻届だ。冬馬さんの欄と証人の欄に冬馬さんのお父様の名前が署名してある。
 
「ここに署名してくれる?」
 私の表情を伺うように指し示されたのは、彼の隣の空欄。

「私と本当に結婚する気ですか? 冬馬さんのお父様は私と会ったこともないのに、結婚を許してくれたんですか?」

「未来の素敵さは伝わってるよ。君は人を変える力のある特別な女の子だ! また、幾らでも両親と会う機会はある。俺は今すぐにでも未来と結婚したい。絶対に幸せにするから、ここに署名して」
 冬馬さんがキラキラした瞳で私を見つめて来流。私は何の力もない上に自分でも面倒な性格をしていると思う。でも、彼が特別だと言ってくれるなら、彼の特別になりたい。

 私は婚姻届を記入しながら、初めて冬馬の年齢と出生地を知った。
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