10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 私が泣きながら告げると、彼が頬を伝う涙を吸ってきた。

「未来、たとえ今後一生俺のことを思い出せなくても、俺は構わないよ。思い出なんてまた2人で作っていけば良いよ」
 自分の方が辛いのに、私を気遣ってくれる彼の優しさにますます涙が溢れ出してくる。

「未来は本当に泣き虫だな。泣き顔も可愛いけど、笑った顔を見せて欲しいかな。俺は君の笑った顔が大好きだから」
 私は彼の要望に答えようと必死に涙をとめて、笑顔を作った。
「大好き、冬馬さん!」
 私の言葉に冬馬さんが目を丸くして頬を染める。早く彼の事を思い出したいと強く思った。

♢♢♢

 「凄いマンション⋯⋯ホテルみたい⋯⋯エレベーターがいっぱい」
 タワーマンションの中に入ったのは初めてだが、内装は高級ホテルのようだった。最も、高級ホテルにも泊まったことはない。

「未来、こっちだよ」
 冬馬さんが私の手を引いていく、エレベーターは階層ごとに分かれているらしい。
 彼について高層階用のエレベーターに入ると、彼が最上階の52階のボタンを押した。
「これ鍵、ここに近づけると自分の住んでいる階だけ降りられるようになっているんだ」
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