10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 最終学歴、中卒の私に世間は厳しかった。
 高校入学を機会に外に出ればよかったのに、その当時の私は完全に無気力だった。
 中卒の私にできるのはアルバイトくらいだ。

 3月末で繁忙期ということで、私は引っ越し屋のアルバイトをした。
 私には強過ぎる光が容赦なく私の網膜を攻撃してくる。
 久しぶりの外は日差しがとても眩しい以上に暑くて、段ボールを抱えた手がプルプルする。

 繁忙期という事で、引っ越しが立て込んでいるらしく社員1人にアルバイト3人だ。
 タワーマンションのペントハウスに引っ越す、城ヶ崎冬馬(とうま)という方はかなりのお金持ちなのだろう。
 駅直結のタワーマンションの最上階のペントハウスなど間違いなく最低でも3億はする。
 繁忙期という事もあり引っ越し代金だけで150万円だ。
 そのキリの良い金額は一円を忍ぶ生活をしている私を惨めにした。
 
「うぅ⋯⋯重い⋯⋯」
 私はせっせと段ボールをトラックから出した。
 そもそも、家具の組み立てなどできない。
 それは私以外のバイトの2人も同じで、社員の1人だけがやっている。

 私はこの社員の澤田優斗が怖い。
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