10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
「冬馬さん、お腹空いてますよね。私、何か作ります」
 私は何だかソワソワしてきて、キッチンの方に急いだ。
(アイランドキッチンってやつだ!)

 冷蔵庫を見ると業者用のように大きく、隣にはワインセラーまである。
「冷蔵庫開けますね」
 一言彼に断って、開けた冷蔵庫は飲み物ばかりで食材が殆ど入ってなかった。

「最近、殆ど外食してたから⋯⋯。今日はケータリングでも頼もう」
「いえ、あるもので作ります。冬馬さんは寛いでてください」
「でも未来は今日退院したばかりなのに⋯⋯」
「入院している間、冬馬さんのお食事のお世話とかできなかったので、させてください」
 私が微笑むと、彼は戸惑ったように微笑み返してきた。

 料理をしていると、インターホンがなる。
 冬馬さんが液晶に映った女性らしき人を見て呟いた。
「あっ、下着来たわ」
 私がエプロンを外して玄関の方に行こうとすると、彼に手で制された。

「俺行ってくるから、待ってて」
「でも、私の下着なのに⋯⋯」 
 恥ずかしく感じながらも、私はお言葉に甘えて料理を続けた。

 開いた玄関扉の音と共に微かに甘ったるい若い女性の声が聞こえてくる。
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