10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
「冬馬さん、実は精密検査の時に医者と看護師が話しているのを聞いちゃったんです。私のこの傷は冬馬さんのストーカーに刺されたものだって⋯⋯罪悪感を感じて今一緒にいてくれているんですよね」

 本当は退院する前には、なぜ彼のような素敵な人が自分と一緒にいてくれるのかに気がついていた。
 それでも、母もいなくなり寂しくて一緒にいてくれる彼の優しさに甘えてしまった。

「確かに、未来が俺のストーカーに刺されのは本当だ。だけど、それと俺が未来を好きだって話は別なんだ」
「傷のことは気にしないでください。背中なので気になりません。私、明日には自分の家に戻ります。寂しさに耐えられないからって冬馬さんの優しさに漬け込んでいる自分が許せないんです!」

 興奮して大きな声を出してしまった。
 私は不倫の末に生まれた子だ。

 それゆえに、後ろ指を指されるような辛い経験をしてきた。
 私がダメな時黙って寄り添ってくれた母の優しさには感謝しているが、不倫していた事はやはり軽蔑している。 
 不倫は最上級の不道徳な行為で。
 人の優しさに漬け込むのもしてはいけない事だ。

「優しくなんかない。俺は⋯⋯」
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