10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
「爽太ってば、本当に優しいんだから。桜田さんが引きこもりになって高校にも行かなかったって有名な話じゃない。どうしてるも何も現在進行中でニートでしょ。お母様のお葬式ちらっと見にいったら、やばいくらいこじんまりしてたよ。ドラマに描いたような貧困層って存在するのね」

 どうしてこの世の中は勧善懲悪ではないのだろう。

 テレビドラマや小説では悪い奴はいつもコテンパンにされる。
 彼らは私を苦しめて楽しんだ悪い奴なはずだ。

 それなのに、彼らは成功者の象徴みたいなマンションにいて、過去にした理不尽な行いがなかったように笑っている。

「こんな所に何しに来たの? 配達? ハウスキーパー? 惨めにスーパーの袋なんて持ってて可哀想⋯⋯」
 私のことを馬鹿にする鈴村楓が憎らしい。

「鈴村さんには関係ないでしょ。私に話し掛けないで」

 心からの言葉だった。
 彼女みたいな人に自分の人生に関わって欲しくない。
 これ以上、自分の人生を彼女のせいで無駄にしたくない。

 たとえ彼女が強かさを駆使して今成功者として成り上がっていても、関わらないでくれるなら構わないと思った。

< 38 / 185 >

この作品をシェア

pagetop