10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
「質問で質問で返すなんて頭悪いんだね。見たまんまの馬鹿女」
冬馬さんが鈴村楓を睨みながら、私の左手の薬指にそっと指輪をはめてきた。

「冬馬さん? これは⋯⋯」
 見たこともないような大きな光り輝くダイヤモンドの指輪に私は見惚れた。

「江夏爽太です。三池商事のアパレル部門で営業をしています。一度ご挨拶した事があるのですが覚えて頂いていればありがたいです」
 江夏爽太が突然、冬馬さんに角度90度で頭を下げた。

「悪いけど、覚えてないわ。正直お前みたいな奴の事、知りたくもないけど!」
 私を抱き寄せながら冬馬さんは私にはめたダイヤモンドの指輪に軽くキスを落とす。
「冬馬さん、仕事は?」
「早く切り上げて来た。未来とできるだけ長く過ごしたくて。指輪、サイズがあってよかった。婚約指輪のつもりなんだけど、これで俺が本気だって分かってくれた?」

 彼が囁いてくる言葉に頭がこんがらがる。
 昨晩、確かに「結婚したい」と彼は言ってくれた。
 でも、その言葉を私は真摯に受け止めてはいなかった。
 彼が本気だったのなら、本当に失礼な話だ。

「分かりました。指輪嬉しいです、冬馬さん」
< 40 / 185 >

この作品をシェア

pagetop