10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 被害届を出すのを手伝っただけでお礼を言ってくる彼女のお人好しさが面白くて、揶揄って楽しんでいたら怒らせてしまった。

 可愛いけれど、潔癖過ぎる彼女は自分とは合わないと思った。
(そんな生き方してたら、絶対に損するぞ⋯⋯)

 もう、彼女とは会うこともないだろうと思った時に、笹倉絵馬に刺されそうになった俺を庇って彼女は倒れた。

 彼女は出血多量で意識を失い、一時は心停止して意識不明の重体となり目が覚めても障害が残る可能性が高いと言われた。

 俺は自分のせいで人が死ぬかもしれないという場面に直面して動揺した。
 多分、俺の親でさえも身を挺して俺を庇ったりしない。
 それなのに、俺を軽蔑しているだろう初対面の女が命をかけて俺を守ろうとしてきた。
 
 彼女がチューブに繋がれて、生死を彷徨っている間は気が気じゃなかった。
 彼女の身内に連絡しようとしても、彼女の持ち物には一切の身分証明書が入っていなかった。
 
 ソプラノ引っ越しセンターに提出していた履歴書から、彼女の身元を割り出した。
 彼女は未婚の母に育てられて、母を失った天涯孤独な身の上だった。
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