10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 それゆえに、彼女は貧しい生活を強いられても目立たぬように未来を育てるしかなかったのだろう。

 未来が目覚めて記憶喪失がないのを良いことに、俺は気がつけば彼女の恋人だと嘘をついていた。
 おそらく、それは自分の願望みたいなものだったのかもしれない。
 魑魅魍魎渦巻くこの世界で、2度と出会えないような天然記念物のような純粋な女の子が気になって仕方がなかった。

 俺の恋人だと聞いた彼女は、俺を素敵な人だと言ってくれた。
 でも、俺には彼女が自分と一線を引いている事に気がついていた。
 俺は彼女のことを知ろうと調べ尽くしたのに、彼女は俺を知ろうとしない。
 年齢も職業も全く聞いてこない。
 
 彼女を早く手に入れたくて、抱こうとしても断られた。

『キスとかそれ以上のことは絶対に結婚する人としかしたくないんです』
 彼女の言葉に今まで俺の頭になかった『結婚』という文字が浮かび上がった。


 最終的に後継ぎが必要だから結婚しなければいけないが、あと15年は結婚する気はなかった。
 でも、結婚で未来を繋ぎ止められるなら、彼女と今すぐにでも結婚したいと思った。
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