10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 罪悪感に苛まれながら、俺はテーブルに置いたままになっている指輪を彼女の左手の薬指にはめる。彼女が頬を染めながら微笑みかけてきて、価値観が違くても嘘を一生つき続けてでも一緒にいたいと思った。

「未来、来週あたりに俺の両親に会って欲しい」
 俺の突然の申し出に驚いたのか彼女は目を丸くした。俺は彼女が記憶を取り戻しても、俺から逃げられないよう外堀から埋める事にした。

「えっ、ご両親にですか? 私、なんかで大丈夫でしょうか⋯⋯気に入って貰える自信がないです」
「大丈夫だから、そんな今から緊張した顔をしないで。未来はこの俺が惚れた女の子なんだから、もっと自信を持ってよ」
 こわばっている彼女を宥めるように声をかける。
 
 うちの親はフラフラしてた俺が落ち着くとなれば、喜んで彼女を歓迎するだろう。しかしながら、結婚する前に彼女の身元を探られるのは、できれば避けたい。『小山内進の隠し子』であると分かれば、色々面倒だと難色を示すのは分かりきっている。もし、そのような事になっても、俺は彼女以外の女と結婚するつもりはない。

 考え事をしていたら、彼女が食器を片付け始めていた。
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