10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 弾むような声で媚びるような目つきで俺に近づいてきたのは、鈴村楓だった。彼女のモデル事務所には圧力をかけて既に彼女を首にしてある。一昨年のうちのブランドの春夏物を着ているが、モデルとして使って欲しいとアピールしたいのだろう。
(せめて、今季の着てこいよ⋯⋯ド三流が!)

「何、不法侵入してるの? このマンション基本的に住民以外は立ち入り禁止なんだけど」
 
「待ってください! 私、実は桜田さんとは中学の同級生で、あの時は⋯
⋯その私と一緒にいた男性、江夏君のことで彼女と喧嘩しちゃってただけなんです。私、2人の恋が再熱するかと思ったら、怖くなって彼女を罵倒するような事をしちゃって⋯⋯」
 鈴村楓は俺の腕に勢いよくしがみつきながら、予想外の事を語り出した。

< 64 / 185 >

この作品をシェア

pagetop