10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
「さっき、床に照明落としたの見てたよ。澤田さんだっけ? 弁護士の俺の前で良くそんな嘘つけるね。お前、破滅させるよ」
 城ヶ崎さんの言葉に、澤田は膝をつき頭を床に擦り付け土下座をはじめた。

「1日中働いても雀の涙のような給与です。今度、妻に子供も生まれるっていうのに⋯⋯」
 唐突な演技くさい泣き落としを見て私は固まってしまった。

(子供? 嘘か本当か分からないけど、こんな暴力的な人に子供?)

 定職につき結婚して子供が産まれる。10年前の私は当たり前に将来そんな未来が来る事を想像していた。でも、今はそんな未来が全く想像できない。目の前の嘘ばかりつく狡い男が、そんな幸せを持ってるのが信じられない。

「じゃあ、作業終了後にこの子置いていってくれたら見逃してやるよ」

 急に腕を引かれ、城ヶ崎さんに抱き寄せられる。そんな事を男性からされた事がなくて心臓が口から飛び出しそうだ。

「あ、ありがとうございます」
 澤田は立ち上がり、颯爽と作業の続きに取り掛かかる。
 彼は当たり前のように、私を城ヶ崎さんに引き渡す約束をした。

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