10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 その後、澤田は無事に城ヶ崎さんから作業終了のサインを貰うと私を置いて去って行った。
 私は予想外の状況にただ固まるしかなかった。きっと、澤田は会社にバイトが仕事途中に離脱したと報告する。反論しに行きたいが、バイトの私より会社は社員の彼を守りそうだ。

 城ヶ崎さんは私と部屋に2人きりになると屈んで私の上着をめくってくる。
「な、何をなさるのですか?」
「何をなさるのですか?って、診察⋯⋯さっき腹殴られてたでしょ」

 城ヶ崎さんの言葉に首を傾けていると、私はいつの間にか万歳をさせられ上着を脱がされていた。思わず胸を慌てて両手で隠す。

「そんな意識されると困っちゃうな。俺、医者だから念の為に診察したいだけなのに。胸が痛いの?」
 彼はくすくすと上品に笑っていた。
 突然の出来事に思考回路がショートしそうになる。

「医者? 確かに胸はあの社員に飛び蹴りされたので痛いです」
 確か先程は彼は自分を弁護士だと言っていたはずだ。タワーマンションのペントハウスに住めるような人だから、それなりの職業の方だろう。社会的信用もあるから、おかしい事はしないはずだ。

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