10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

「謝罪は受け入れないよ。自分が謝って楽になりたいだけでしょ。もう、私に構わないで」
　申し訳なさそうに偽善者ぶる彼に寒気がした。
　担任にも相談したが、鈴村楓の父親の力が強い田舎町では担任は見て見ぬふりをするしかないようだった。
　鈴村楓が好意を抱いていた江夏爽太だけは私のイジメを止められた気がしていた。当時の彼はモテモテでクラスのほとんどの女子が彼を好きだった。私は、色恋事に対して嫌悪感もあるタイプだったので、彼に惹かれる事はなかった。

　机の引き出しの教科書をボロボロにされていたショックを受けていた時に、私は彼と目があったのを覚えている。
　しかし、彼は私からそっと目を逸らした。
　その後も、何度も私のイジメられている場面を見てきた彼はいつもその場を見なかったように立ち去るだけだった。

「俺、本当に桜田さんの事が好きで、振られたのがキツくて気まづくて何もできなかったんだ」
「じゃあ、私が江夏君の告白を受け入れていたら助けてくれてたんだ」
「多分、彼氏として君を助けたと思う⋯⋯」