10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 俺も未来以外の誰かが少しでも時間に遅れてきたら、いい加減な人間と見做すだけだ。

「お父様は仕事があるから、遅れてしまうのは仕方ないでしょ」
「父さんは仕事のアポイントメントでは遅れないと思うよ。それなのに、今、時間通りに来てない事に俺も腹が立ってるって分からない?」
 父が時間を守っていないのは家族への甘えもあるのかもしれない。
 それでも、母が未来の遅刻だけを指摘したのが許せない。
 父が遅れてくるのが、未来の存在を軽視しているようでムカつく。

 城ヶ崎家に根付いた男尊女卑のような考えが、今後、未来を傷つけたりするのではないかと思うと黙っていられなかった。
 母は父のことはいくらでも待つが、嫁になる未来が遅れる事には苛立つ。
 
 母とは盆暮正月にしか合わないが、彼女から俺は結婚しろと再三五月蝿く言われてきた。
 その度に40歳を過ぎたくらいには結婚しても良いかもと適当に受け流してきた。

 俺が結婚したい相手がいると言った時は、喜んでいた母は未来に対してもう見定めるような立ち位置になっている。

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