10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
「江夏君、ごめんね。私、江夏君のご両親に電話を掛けようと思って勝手にスマホ触っちゃった。ロックが掛かってて開かなくて、電話は掛けられいないんだけど」
「今、両親は結婚記念日のスペイン旅行中だから、どちらにしろここには来られなかったよ」
「そうなんだ⋯⋯年を重ねても仲が良いなんて素敵なご両親だね」
「ちなみに俺がその旅行をプレゼントしたんだけどね」

 得意げにニカっと歯を出して、ピースをしてくる彼の頭を撫でた。
「そうなんだ。江夏君は優しい子だね」

 突然、彼が私の手首を掴んでくる。

「そういうところ⋯⋯。俺は桜田さんのそういう思わせ振りな行動で俺に気があるって誤解した。告白したら絶対に成功すると思ってたんだけどな」
 突然、10年も前の話をされて驚いてしまう。
 
 私はサッカーの試合で勝ったり、テストで良い点数を取ったりする度に私のところに来る彼の頭を撫でていた。それは、彼が子供みたいに頭を撫でて欲しいって顔で私に頭を差し出してたからだ。

「変な誤解させて、ごめん⋯⋯それから、江夏君はこの先も誰も守れないなんて酷い事言ってごめんね」
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