10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
 歳だけとって社会人の世界を知らない自分が恥ずかしくなり、思わず俯く。
 江夏君が突然、俯いた私の頬に触れて顔を上げさせてきた。


「えっ? 何?」
「城ヶ崎冬馬さんとは別れた方が良いよ。彼は服を着替えるみたいに、女性を取っ替え引っ替えしている超遊び人だから。桜田さんみたいな真面目な子が関わったら絶対に傷つく」
 私を真剣な瞳で見つめてくる江夏君の瞳は14歳の私の誕生日に告白してきた彼の瞳と同じ真剣な強い光を放っていた。

「でも、私の知っている冬馬さんはそんな人じゃなくて⋯⋯もし、過去にそういう時期があったとしても、私だって人に誇れる過去なんて持ってないから」

 私にとっては今見ている冬馬さんが全てだ。
 過去に女性関係が派手な時があったとしても、冬馬さんくらいカッコ良くて魅力のある人なら仕方ないのかも知れないと思っていた。

 江夏君が私の両手をとり、指を絡めてくる。

「桜田さん、そういう遊び人の男は絶対に変わらないよ」
 真っ直ぐ見てくる彼のヘーゼル色の瞳を見つめ返す。
 どこかの血が混じってるんじゃと、田舎町で女の子たちを興奮させた瞳だ。

< 97 / 185 >

この作品をシェア

pagetop