🕊 平和の子 、ミール🕊  ~新編集版~
 しばらく落ち込んでその場に立ち続けたが、メモが手に無いのに気づいて我に返った。
 床で萎れていた。
 拾い上げると、端の方が濡れていた。
 そっと拭ってから引き出しに戻して椅子に座ると、目の前のラックにはCDが並んでいた。
 妻が好んで聴いていたジャズのCDだ。
 右からざっと見たが、ほとんど知らないミュージシャンばかりだった。
 ロックが好きな自分にとってジャズは身近ではなかった。
 
 しかし、一番左側に行き着くと知ったミュージシャンに行き当たった。
 マイルス・デイヴィス。
 ジャズに縁のない人でも知っている偉大なトランぺッターだった。
 
 それを引き抜いて表紙を見ると、演奏するマイルスの顔がアップになっており、タイトルが青字で小さく記されていた。
『Kind of Blue』
 意味深なタイトルだった。
 その下を見ると、更に小さな文字でメンバーの名前が記されていた。
 しかし、ジョン・コルトレーンとビル・エヴァンス以外はまったく知らないミュージシャンだった。

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