🕊 平和の子 、ミール 🕊 【新編集版】
 翌日、出社してすぐに彼を昼食に誘った。
 時間は1時にした。
 周りに人が少ない方が話しやすいからだ。
 
「でかい話だな」
 こちらの話を聞き終わった彼の第一声だった。
 考え込むような表情になったので断られるかと思ったが、「でも、面白い」と言って食後のコーヒーをうまそうに飲んだ。
「協力してくれるか?」
 思わず前のめりになったが、彼は腕を組んで、また考え込むような表情になった。

 それからが長かった。
 コーヒーと水を飲むだけで一切口を開かないのだ。
 一心に何かを考え続けているようで、会社に戻る間も無言を貫いた。
 
「社内より社外を優先すべきだな」
 会社に戻ってエレベーターに乗った時、独り言のような声が聞こえた。
 見ると、彼は行き先階の数字を見つめながら頷いていた。
「絶対に社外からだ」
 そう言い残してエレベーターを降りた。

 彼の行動は早かった。
 異業種交流会で知り合ったメンバーに次々に声をかけ、1週間も経たないうちに会合の日時と場所を決めていた。
 案内のメールが来た時には驚いたが、彼の感覚では当たり前のスピードのようだった。
 
 
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